2021.09.14

発達障害とは?その1

Column

発達障害とは?その1

 

発達障害を考える前に,障害とはなにかを考えていきたいと思います。

障害とはなにかを考える時,そのコンセンサスの基盤となるのは,WHO(World Health Organization:世界保健機関)の障害モデルです。今後お話しする機会があると思いますがアメリカの精神医学会が出している診断基準のDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:精神疾患の診断・統計マニュアル) や,WHOが出している診断基準ICD(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems:国際疾病分類) にも,この障害モデルが色濃く反映されています。現在の障害モデルは,2001年に提案されたICF(International Classification of Functioning, Disability and Health:国際生活機能分類)モデルです。これは障害を「心身機能・構造」「活動」「参加」のいずれかに制限がある状態と定義しています。したがって,障害への支援とは,この制限をできるだけ少なくすることになるというわけです。制限の軽減を実現するための視点も提案されており,それには環境因子と個人因子の2つがあります。このモデルの優れているところは,障害を個人の機能的・器質的な問題とするのではなく,環境との相互作用にあると考える点にあります。また,個人から切り離されたものではなく,その人の個性でもあり,多様性でもあるわけで,個人の中で包含され,直すべきものでもなく,個人の特徴として環境と融和していくことを目指しているわけです。

 

WHOが1980年に提唱したICIDH(International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps:国際障害分類)モデルは,機能・形態障害が能力障害を引き起こし,それによって被る社会的不利益までを障害と考えたところに大きな特徴があり,障害を多面的,構造的に理解する視点を示したこと,それを基にした施策が展開されたこと等,大きな功績を残しましたが,社会という環境との相互作用という視点が入っておらず,個人の障害軽減が支援の目標となっていました。それにより,障害のある人は訓練をして,一般の人のようになることを求められたともいえるわけです。障害は直すという医学モデルだったわけですが,I C Fによって,障害は直すものではなく,また,その人から切り離されたものではなく,その人の個性でもあり,多様性でもあるわけで,個人の中で包含されているわけです。直すべきものでもなく,個人の特徴として環境と融和していくことを目指しているわけです。これは,障害の社会モデルと言われるもので,I C Fによって,障害の考え方は,医学モデルから社会モデルへと大きく変わったのです。

 

 

黒田美保

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