2021.09.28

発達障害とは?その2

Column

発達障害とは?その2

 

I C Fの考え方にそって,発達障害についてみていきたいと思います。発達障害とは,生まれつきの脳の機能的障害のために,ものの見方や感じ方に偏りが生じ,他者との相互的コミュニケーションが難しくなったり,こだわりや注意の問題,多動,不器用などが生じたりして,その結果,社会適応に困難をきたすことと考えられています。もちろん,環境によってその適応の程度には差があり,同じ症状があったとしても,環境との相互作用により同じ困難の程度となるわけではありません。場合によっては障害といわれる状態にならない可能性もあります。発達障害の症状がありながらも診断をもっていない人ももちろんいるわけです。つまり,環境の相互作用によって,問題が生じなければ診断はしないということなのです。

 

発達障害の診断は,その1でも書いたように,現在,DSMやICDに基づいて行われます。DSMやICDの研究版は,信頼性の高い診断を得るために,実際に観察可能な行動について明確な基準を設けた操作的診断基準をとっています。これは,精神科の疾患の多くが原因不明でエビデンスのある生物学的な指標がなく,症状に基づいて診断をせざる得ないためです。操作的診断基準では,ある精神疾患について,いくつかの行動上の特徴がリストアップされており,そのうちいくつの項目に合致するかによって診断がつけられます。これにより,同一の診断名をもつ群の行動特性や認知特性の一定の均質性が担保されるように意図されているのです。

 

2013年5月に改訂されたアメリカ精神医学会による診断基準DSM-5では,発達障害は「神経発達症群」(Neurodevelopmental Disorders)と呼ばれるようになりました。DSM-Ⅳ-TRまでは「通常,幼児期,小児期,または青年期に初めて診断される障害」といわれており,DSM-5で初めて発達障害がきちんと位置づけられたともいえます。この神経発達症群には,知的能力障害群(Intellectual Disabilities: ID),コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群(Communication Disorders), 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder: ASD),注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit /Hyperactivity Disorder: ADHD), 限局性学習症/限局性学習障害(Specific Learning Disorder: SLD), 運動症群(Motor Disorders)が含まれています。これらの障害は重複して存在することが珍しくありません。また,障害と非障害の間の線引きもあいまいであり,症状を連続体(スペクトラム)としてとらえることが妥当だと考えられています。つまり,個人の症状は固定的ではなく流動的であり,多様性があるのです。

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